夏の句

写経して鬱なる初夏を払ひけり

夏蝶に翻弄されて日の暮るゝ

呼ぶ声に足を取らるゝ夏の浜

コロナ禍に客堪へゞの薔薇の園

荒ゝと濁りを混ぜて海の秋


ぬり絵塗る心の襞に木の実落つ

利根川の梅雨雲蹴ってボートゆく

ほつれたる絆取りなす冬の虹


春風に声かけらるゝガラス窓

豌豆を穫るや命の転げ出し

秋風に揺るゝ川面やカヌーの子

橋渡りきるまでの餌鴨群るゝ

不意打ちの声に飛び出す沼の鴨


幽寂な蛍の国へ入り込む

冬木の根を占拠して猫ねむる(冬の句)

三つ四つ有って又買ふ冬帽子(冬の句)

兄弟の揃う日の無き盆提灯

老犬の気ままな歩幅松の芯


急ぐ事も無き歩幅や早苗揺る

縫ふやうに茶山を駆けて新芽撮り

大堰の音高々と流れゆく

どくだみや身悶えの検査のつづく

大腸の御機嫌とりの西瓜食む

いかれてる蒟蒻の花にくぎづけ