春の句

初春の句 ・下萌へて畑の道具点検す ・過ぎし日の塗り直したき万燈日 ・浅春や義父の便りのないままに ・根分けして見上ぐる空の真っ平 ・春日差し紅茶の欲しくなる眺め ・良きことの予感の色や蕗の薹 ・竹籠へ香り捥ぎ穫る蕗の薹 仲春の句 ・乾杯を拒む人有り春の宴 ・谷側へ雪崩るゝやうに白木蓮 ・古傷に声掛けらるゝ沼桜 ・木蓮の域侵されし地鎮祭 晩春の句 ・歩いては休んでばかり花薊 ・一輪草強気な色を投げらるゝ ・告白の意味解せぬまま花の雨 ・神経の一人歩きや花疲れ ・造園のカートを押す間の春落ち葉 ・古傷はフルイキズナリ山笑ふ ・あまびえの焼き菓子を盛り初茶会 ・春風に負けつづけてる土手の土 (柳生正名選) ・包帯の外れて桜眩しけり ・初孫の乳吸ふ力松の芯 ・煌めきを春の海から貰う幸   芳流 初夏の句 ・飽きるほど乗って牡丹に会いに来る ・無秩序に域伸ばしたる矢車草 仲夏の句 ・もどかしき彩となりたる百日紅 ・固まりて咲くドクダミのみな笑顔 ・わんぱくの傘振り回す梅雨の空 ・雨冷えや物の弾みと向かい合ふ ・早苗田に雲の映るやもの想ひ ・菖蒲田や色の数ほど話沸く ・早熟の少女のやうにアヤメ咲き ・本音など知りたくもなし睡蓮花 ・ビアホールついに本音は聞けぬまま ・腑に落ちぬ目とすれ違ふ梅雨の冷え ・誰かれと車置きゆく夏木立 晩夏の句 ・蝉時雨を掻き分けてゆく絵画展 ・ドライブや臓器鈍らす油照 ・穫り入れの籠に伝はる茄子の音 ・草取りの草に脅さる指の麻痺 ・孔雀草剪って真っ直ぐ手渡さる ・ザソザソと命呆けゆく晩夏かな ・向日葵に高見見物されてゐる 三夏の句 ・青草の波浪となりて押し寄せり ・炎天を撥ねつけるごとぺダル踏む ・クラフトのやうに秋蝶転がるゝ ・病める素足をあずけゐる夏の浜 ・夏雷に作業の手順狂ひけり ・波音の単調となる浜の秋 ・薫風の走者見送る車椅子 ・孫にのみ見せし笑み有り父の盆 ・片影を求め求めて村はずれ