冬の句


・川下へ鎌首もたげ寒の波

・朔風の中へ追はるゝ鳥の声

・露霜を拭きてその日の始まれり

・大根に負けて外科へと飛んでいく

・亡母が居るやうに咲いてる花八手


・花弁の一部となりし冬の蝶

・面影の呼応と見たり冬の虹

・律儀なほど巻かれし白菜積まれをり

・北窓を塞ぎて闇をねぢ伏せり

・奔放に冬将軍の吹きぬけり


・土中より胸出す石仏(ほとけ)冬の暮

・サーファーの崩れては起つ冬の波

・束の間の日を戯るゝ冬の蝶

・三つ四つ有って又買ふ冬帽子

・セーターを邪魔にしている散歩道


・山茶花の根本と決めし鳥の墓

・冬駅に忘れ来し荷の届けられ

・冬の貝見知らぬ人と拾い合う

目ぼしき貝に出合ふまで冬の浜

手に入れし本に浮かるゝ冬の貝


美容院に滑り込みセーフ一月尽

冬の浜目ぼしき貝に出会ふまで